PBW・シルバーレインのPC、テーオドリヒ(b37116)と幻(b36617)の日記。詳しくは<はじめに>参照のこと。
過去からのメール11――【5/3テオ 記す】
2008-05-09 Fri 18:42
「ああ、もうすぐ時間じゃん」
 俺はサイズの合わない腕時計の文字盤を見た。

 もうそろそろ、住吉を離れなくちゃいけない時間だ。


「どうしたの?」
「今からゴーストタウンに行かないと、学園に戻るのが遅くなっちまうから」
「ごーすと・たうん?」
「ああ。人が住まなくなって、世界結界が緩んでる場所さ。
 ゴーストが大量発生するから、そこを定期的に掃除するのさ」
「そんな怪我で!?」
「大丈夫。仮にも俺、能力者だぜ」
 さすがにゴーストを数体、倒すのが関の山だろうけれど。
「あなたね…」
 少しだけ言葉を失う彼女に、俺は最後に伝えるべき言葉を言った。


「学園に来ないか」
「えっ?」
「このままだと将来、レキナは『見えざる狂気』って奴に犯される。
 力が、お前を変えちまうんだ」

 ……かつて、俺が狂気に呑まれたように。
 今度は靂奈が、誰かを傷つけてしまう。
 それは耐えられない。

 靂奈は俺の顔をじっと見つめていたが、やがて首を横に振った。
「家族が、住吉にいるもの。
 置いては行けない」
「けど!
 イグニッションカードが無いと、あんた…」
「…大丈夫。今は行けないけど、高校になる頃には必ず行くわ。
 だから心配しないで」
 そう言って彼女は笑う。
「…そっか」
 俺はほっとしたように、肩の力を抜いた。


「じゃあ、俺は行くよ」
「テオ君!」
 その声に、俺は振り返った。
 靂奈は、真剣な目で俺を見、そして言った。

「あの、ね。
 小学校の女の子が、友達に呼ばれたってだけで、夜中に人目の無い所まで行くと思う?」
「…そういや、そうだけど…」

「私、テオ君のことが好きだった。
 今でも、好きなの!」

 言葉を失った。
 俺は、靂奈のことをもっともっと深いところで、裏切っていたのだ。


「……悪ぃ。
 俺、今、好きな奴がいるんだ。
 俺、どこまでお前を傷つけちまうんだよな……」


 どれだけ詫びようと、彼女には言葉が足りない。
 俺は……。


「私、諦めないから!
 高校になったら、絶対にテオ君にアタックするんだから!
 それまで、絶対に死んじゃダメだからねっ!」

「…死ぬかよ。
 俺は生きて償うって、義父さんと義母さんに誓ったんだからさ」

 俺は頷いた。

 そして、彼女と別れた。


 去り際に一度だけ振り返ると、彼女の元に黒猫が近づいていくのが見えた――。


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