過去からのメール11――【5/3テオ 記す】2008-05-09 Fri 18:42
「ああ、もうすぐ時間じゃん」
俺はサイズの合わない腕時計の文字盤を見た。 もうそろそろ、住吉を離れなくちゃいけない時間だ。 「どうしたの?」 「今からゴーストタウンに行かないと、学園に戻るのが遅くなっちまうから」 「ごーすと・たうん?」 「ああ。人が住まなくなって、世界結界が緩んでる場所さ。 ゴーストが大量発生するから、そこを定期的に掃除するのさ」 「そんな怪我で!?」 「大丈夫。仮にも俺、能力者だぜ」 さすがにゴーストを数体、倒すのが関の山だろうけれど。 「あなたね…」 少しだけ言葉を失う彼女に、俺は最後に伝えるべき言葉を言った。 「学園に来ないか」 「えっ?」 「このままだと将来、レキナは『見えざる狂気』って奴に犯される。 力が、お前を変えちまうんだ」 ……かつて、俺が狂気に呑まれたように。 今度は靂奈が、誰かを傷つけてしまう。 それは耐えられない。 靂奈は俺の顔をじっと見つめていたが、やがて首を横に振った。 「家族が、住吉にいるもの。 置いては行けない」 「けど! イグニッションカードが無いと、あんた…」 「…大丈夫。今は行けないけど、高校になる頃には必ず行くわ。 だから心配しないで」 そう言って彼女は笑う。 「…そっか」 俺はほっとしたように、肩の力を抜いた。 「じゃあ、俺は行くよ」 「テオ君!」 その声に、俺は振り返った。 靂奈は、真剣な目で俺を見、そして言った。 「あの、ね。 小学校の女の子が、友達に呼ばれたってだけで、夜中に人目の無い所まで行くと思う?」 「…そういや、そうだけど…」 「私、テオ君のことが好きだった。 今でも、好きなの!」 言葉を失った。 俺は、靂奈のことをもっともっと深いところで、裏切っていたのだ。 「……悪ぃ。 俺、今、好きな奴がいるんだ。 俺、どこまでお前を傷つけちまうんだよな……」 どれだけ詫びようと、彼女には言葉が足りない。 俺は……。 「私、諦めないから! 高校になったら、絶対にテオ君にアタックするんだから! それまで、絶対に死んじゃダメだからねっ!」 「…死ぬかよ。 俺は生きて償うって、義父さんと義母さんに誓ったんだからさ」 俺は頷いた。 そして、彼女と別れた。 去り際に一度だけ振り返ると、彼女の元に黒猫が近づいていくのが見えた――。 テーマ:Silver Rain - ジャンル:オンラインゲーム |
この記事のコメント |
コメントの投稿 |
|
|
この記事のトラックバック |
|
| HOME |
|



