テオの銀の雨降る日々

 詳しくは<<はじめに>>をご参照ください。


過去からのメール10――【5/3テオ 記す】

 泣き崩れた俺が起き上がるのを待って、彼女と俺はいろんな話をした。

 別れてから、俺と彼女が歩いた道のりを。
 学園のこと、吸血鬼達のこと。
 そして、別れる前の、学校でのこと。


「…強く、なりてぇ」
 俺は気づくと、そう呟いていた。
 話題は、直前に参加した依頼のことになっていた。

「何も…できなかった」
 悔しさが、滲んだ。

 アビリティがかわされ、戦闘になった直後には意識を失い。
 そして、彼女の力にもなれなかった。

「償うために……生き残るための、強さが」


 自分の無力さが、何よりも心に染みた。

 
「テオ君は、強いよ」
 靂奈が俺の手を握った。
 …俺が、ナナさんの手を握ったように。

「今のテオ君は、強いよ。
 自分のことが、分かってるもの」
「でもっ!」
 俺は思わず声を荒げた。
 自分の素質による向き不向き、できることやできないことは少しぐらい分かり始めている。
 今の実力が、どんなものかぐらい…。


「少なくとも、今のテオ君は、間違いを認められるぐらいに強いんだから。
 目の前の強さを求めるだけじゃ、その強さを忘れちゃうよ?」


 俺と同じ年の少女は、俺よりもずっと大人で、冷静だった。
 俺は、彼女の強さに、息をのんだ。



「……悪ぃな。
 お前に謝るはずが、お前に力づけられてばかりだ」


 ……強くなりたい。
 本当の意味で、もっともっと。




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