テオの銀の雨降る日々

 詳しくは<<はじめに>>をご参照ください。


球宴の後、紅茶の誓い――【5/29 幻記す】

 鼻先をくすぐるこの匂いは――。
「今日は、薔薇か?」
 俺は手元のカード・ホルダーから視線を離し、幻に話しかけた。
「ええ。
 『ローズ・ダージリン』というブレンドですよ。
 相性、いいでしょう?」
「まぁな」
 薔薇の花と、茶葉の香りが混ざり合い、華やかに部屋を演出する。
 その心地良さに、俺は少し笑み崩れる。

「肩の痛みはとれたのか?」
「ええ。今朝には」
 そう言いながら、幻はティーポットを乗せた盆を運んでくる。
「……そっか。
 緊張しすぎだっての」
 この前のソフトボール大会で、幻は『皆、運動苦手だから』という結論の下、参加することになった。
 よりにもよって『ボール恐怖症』のあいつは、トップバッターに抜擢され。

 緊張の余り、肩に力を入れ過ぎて壊していた。

「依頼でもないのに重傷になるなよ」
「いつもGTで“ひっくり返ってくる”テオ君よりはましです」
 その切り返しに、俺も苦笑いするしかない。


「でも、溜まってきたよな。少し」
 イグニッション・カードをまとめたホルダーを見ながら、俺は呟く。
 GTから持ち帰った武器が、かなり溜まってきたのだ。
 使わないものは銀に戻しているとはいえ、それなりにいいものもある。

「使わないもの、私に譲ってもらえませんか?」
「どういうことだ?」
「私、いつか結社を開きたいんです。
 表向きは茶葉専門店の結社は無いでしょう?
 もちろん、本質は能力者同士の集まりの場所として」

 人好きのする、幻らしい言い分だ。

「いや、結社の財産で茶葉集め放題が目的なのは事実ですが」
「おひっ」
「結社として、いいものも作りたくて。
 そのメインコンテンツとして、詠唱兵器倉庫も置いておきたいと思ったんです」


「…いいぜ。その時には協力すっから」
 俺は、カードホルダーを幻に貸した。
「頑張れよ」


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買い物、いろいろ&倉庫

 GTを開けて溜まった裕福度を一部使い、買い物をしてみました。



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ガイドブック読破

 ようやくガイドブックを読破しました。


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イグカ思案中

 現在、イグニッションカードのイラストを思案中です。
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タマネギ・ティーとソフト・ボール

「ソフト・ボール…」
 何やらどんよりとした空気とともに、幻が呟いた。


 ちなみに今日のお茶は『玉ねぎ茶』。
 とは言っても、玉ねぎの実をを使っているわけじゃない。
 玉ねぎの皮と、ミントの葉を一緒に淹れて作るそうだ。

 一時期は『春摘み』の旬のお茶が多かったが、最近はまたフレーバーティなどを入れ始めている。


「今度の球技大会のことか?」
「ええ。…私、体を動かすのが苦手なんですよ」
 …能力者らしからぬ言葉を呟く幻に、俺は思わず吹きそうになった。

「そりゃ、イグニッションすれば、一般人よりは動けますよ。
 でもね…」
 さらにため息一つ。
「思い出しますよ。
 姉さんに連れ回されていったエキストラのこと。
 少年野球のギャラリーの役で、ちょうど打ち上げられたホームランに運悪く激突したことを……」

 すごい確率だな、おひ。

「……悪い。嫌なことを思い出させたな」

「いいんですよ。
 それ以来、球技そのものが苦手で…」
「まぁ、強制参加ではねぇし。
 俺も参加は見合わせかもな。俺のクラスも参加は活発じゃねぇし」

「私、当日は選手にお茶を配るのに専念しようかと思っています」
 玉ねぎ茶を見ながら、幻が呟く。
「……うん。それがいいんじゃね」

 適材適所、ということだ。

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背後、ちょっぴり多忙につき

 ……GWが全部無くなった背後です。

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過去からのメール12――【5/3靂奈 記す】

「振られました」
 私は足もとの黒猫――師匠である吸血鬼に、呟いた。

 ああ、ほんとに――見事に振られた。
 10か月も遅れた断りの言葉が、胸に突き刺さる。


 私は口をほとんど動かさないようにし、足もとにかろうじて届く声で礼を述べる。
「今日はほんとにありがとうございました」
「にあ」
 黒猫は前足を揃えて一鳴きすると、地面を引っ掻いた。
『どういたしまして。
 心残りは消えましたか?』
 そう、地面を描く。
「ええ、きっぱりと」

 黒猫は建物の蔭に入り――そして、人の姿になった。


「彼は、少し生き急いでいるようですね」
「気がつかれましたか?」
「ええ。
 彼自身は気づいていないかもしれませんが、ね」
「やっぱり、あの事件が原因でしょうか」
「激情しやすい性格なのでしょうが…。
 ご両親の事が、彼を更に不安定にしているのは事実でしょう」
「そう…ですか」


「いいのですよ? 銀誓館に行きたいなら、手続きをしましょう。
 彼を止める人間も、傍には必要でしょうから」
「それを私にしろ、と言うんですか?
 あれだけ見事に振られた後なんですよ?」
 私は首を横に振った。
 違う女性を追う彼の横にいれるほど、私は強くない。

「彼を止めるのは私の役目じゃない。
 だけど……」


 テオ君……あなたの養父母が亡くなったのは、あなただけの罪じゃない。
 止められなかった、私も悪いんだよ。



「もし、銀誓館に行く時が来たら、それは彼の罪を代わりに背負う覚悟ができた時です。
 彼の罪の半分は、私の罪でもあるんですから」 


「あなたが気に病む必要など、一つもありませんが…。
 分かりました。この話はここまでにしましょう」

 気配はまた、猫の形をとり、一つ鳴いて、離れて行った。


「こんないい女、振るなんて馬鹿よ」
 虚勢ひとつ張り、私もまた帰路についた。


「死んじゃダメなんだから。
 死んじゃったら、銀誓館まで行ってひっ倒すんだから」


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過去からのメール11――【5/3テオ 記す】

「ああ、もうすぐ時間じゃん」
 俺はサイズの合わない腕時計の文字盤を見た。

 もうそろそろ、住吉を離れなくちゃいけない時間だ。


「どうしたの?」
「今からゴーストタウンに行かないと、学園に戻るのが遅くなっちまうから」
「ごーすと・たうん?」
「ああ。人が住まなくなって、世界結界が緩んでる場所さ。
 ゴーストが大量発生するから、そこを定期的に掃除するのさ」
「そんな怪我で!?」
「大丈夫。仮にも俺、能力者だぜ」
 さすがにゴーストを数体、倒すのが関の山だろうけれど。
「あなたね…」
 少しだけ言葉を失う彼女に、俺は最後に伝えるべき言葉を言った。


「学園に来ないか」
「えっ?」
「このままだと将来、レキナは『見えざる狂気』って奴に犯される。
 力が、お前を変えちまうんだ」

 ……かつて、俺が狂気に呑まれたように。
 今度は靂奈が、誰かを傷つけてしまう。
 それは耐えられない。

 靂奈は俺の顔をじっと見つめていたが、やがて首を横に振った。
「家族が、住吉にいるもの。
 置いては行けない」
「けど!
 イグニッションカードが無いと、あんた…」
「…大丈夫。今は行けないけど、高校になる頃には必ず行くわ。
 だから心配しないで」
 そう言って彼女は笑う。
「…そっか」
 俺はほっとしたように、肩の力を抜いた。


「じゃあ、俺は行くよ」
「テオ君!」
 その声に、俺は振り返った。
 靂奈は、真剣な目で俺を見、そして言った。

「あの、ね。
 小学校の女の子が、友達に呼ばれたってだけで、夜中に人目の無い所まで行くと思う?」
「…そういや、そうだけど…」

「私、テオ君のことが好きだった。
 今でも、好きなの!」

 言葉を失った。
 俺は、靂奈のことをもっともっと深いところで、裏切っていたのだ。


「……悪ぃ。
 俺、今、好きな奴がいるんだ。
 俺、どこまでお前を傷つけちまうんだよな……」


 どれだけ詫びようと、彼女には言葉が足りない。
 俺は……。


「私、諦めないから!
 高校になったら、絶対にテオ君にアタックするんだから!
 それまで、絶対に死んじゃダメだからねっ!」

「…死ぬかよ。
 俺は生きて償うって、義父さんと義母さんに誓ったんだからさ」

 俺は頷いた。

 そして、彼女と別れた。


 去り際に一度だけ振り返ると、彼女の元に黒猫が近づいていくのが見えた――。



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過去からのメール【テオの過去絡み1】 | コメント:0 | トラックバック:0 |

過去からのメール10――【5/3テオ 記す】

 泣き崩れた俺が起き上がるのを待って、彼女と俺はいろんな話をした。

 別れてから、俺と彼女が歩いた道のりを。
 学園のこと、吸血鬼達のこと。
 そして、別れる前の、学校でのこと。


「…強く、なりてぇ」
 俺は気づくと、そう呟いていた。
 話題は、直前に参加した依頼のことになっていた。

「何も…できなかった」
 悔しさが、滲んだ。

 アビリティがかわされ、戦闘になった直後には意識を失い。
 そして、彼女の力にもなれなかった。

「償うために……生き残るための、強さが」


 自分の無力さが、何よりも心に染みた。

 
「テオ君は、強いよ」
 靂奈が俺の手を握った。
 …俺が、ナナさんの手を握ったように。

「今のテオ君は、強いよ。
 自分のことが、分かってるもの」
「でもっ!」
 俺は思わず声を荒げた。
 自分の素質による向き不向き、できることやできないことは少しぐらい分かり始めている。
 今の実力が、どんなものかぐらい…。


「少なくとも、今のテオ君は、間違いを認められるぐらいに強いんだから。
 目の前の強さを求めるだけじゃ、その強さを忘れちゃうよ?」


 俺と同じ年の少女は、俺よりもずっと大人で、冷静だった。
 俺は、彼女の強さに、息をのんだ。



「……悪ぃな。
 お前に謝るはずが、お前に力づけられてばかりだ」


 ……強くなりたい。
 本当の意味で、もっともっと。




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過去からのメール9――【5/3テオ 記す】

「……済まない!」

 JR住吉駅に近い、小さな公園。
 声が聞こえる範囲に人がいないことと、靂奈がベンチに座ったのを確認すると、俺は深く頭を下げた。


 結局、何を言えばいいのかは分からなかった。
 赦してもらうのではなく、相手に謝りたい。
 ただそれだけでここまできたけれど。

 でも、それ以上のことを、言葉という形にできなかった。
 なんとか声にできたのは、事実を確認する言葉だけ。


「…俺、俺は、お前のことを…っ、ころ……そうと……した…」


 その途端、いろんな想いが俺の中で溢れた。

 捻子蟲への――そして俺自身への憎しみ。
 両親への思慕と、悲しみ、寂しさ。
 絶望と、苦痛と、それらの負の感情がぐるぐると渦を巻く。


 その中で、一つ確かな想いを、俺はかろうじて捕まえる。

「俺は、お前の気持ちを、踏みにじったんだ。
 赦してくれとは、言わねぇ。
 けど、どうか謝罪させてくれ…」


 吐息が、想いが、涙となって溢れそうになるのを、俺は喰いしばった。
 これは俺の苦しみであって、彼女への気持ちじゃない。
 彼女に打ち明けるものじゃない。


 と、手が暖かいものに触れた。

「人狼が植え込まれた捻子蟲のこと、聞いてるわ。
 大変だったんだよね」

 靂奈の手だった。


 ……虚勢も、ここまでだった。
 俺は、その場で崩れ落ちた。
 



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過去からのメール8――【5/3テオ 記す】

JR住吉駅内にある、小さなクッキー専門店。
 その横には、試食も兼ねた10席ほどの喫茶スペースがある。

 そこに彼女――成髪・靂奈(なるかみ・れきな)は待っていた。
 硬い表情で外を見ていたはずの彼女は、俺を見て、息を飲んだ。

「久しぶりだな、レキナ」
「久し振り、ね。
 …その傷はどうしたの?」
「依頼で、さ」
 俺は自嘲の笑いを浮かべるが、靂奈には分かるはずもなく、首を傾げるだけだ。

 俺は彼女の前の席に座り、メニューを開く。
 そして財布の中身と比べる。

「――やっぱり外で話さないか?」
 今の小遣いでは、ジュース代すら出そうにない。
「ピンチなの?」
「ああ。
 ペットサロンで、使いきった」
「ぺっとさろん?」
「……いろいろ、あってさ」


 いろいろとあったのだ、うん。


「…少しぐらいなら、おごるよ?」
「いや、それも悪いから」
「じゃ、ちょっと待ってて」
 ちょうど食べ終わっていたらしい彼女が、会計を済ませる。


「近くの公園に行こっか」
「悪ぃ」



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過去からのメール7【5/3 テオ記す】

 GWに電車で外出するのは、無茶としかいいようがないだろう。
 鎌倉から新幹線とJRを乗り継いでいる間、まともに息を吐くだけの空間を確保することはできなかった。

 まぁ時折、俺の怪我を見て――あるいは銀髪碧眼に好奇を向けて――僅かに場所を譲ってくれる人もいたが、返って気おくれせずにいられなかった。


 怪我が完治し、GWが終わってから行くべきだとは分かっていたのだ。
 とはいえ、今日を逃すわけにいかなかった。

 彼女が逢ってくれる、といったのだから。



 なけなしの小遣いは、事情があって使い切ってしまっていた。
 その上で交通費を捻出する方法は、俺には一つしか思いつかなかった。

 紫刻館――神戸にあるゴーストタウンに行くと学園に申請し、交通費を出してもらうことだった。

 当然学園側からは『治ってからの方がいい』とも忠告されたが、それを無理に押し、出発した。



 俺は新幹線を大阪で降り、そのままJR住吉駅まで向かった。

 その駅ビルの中にある小さなカフェが、俺と彼女の待ち合わせ場所だった。


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過去からのメール6 【5/3 テオ記す】

 神戸、という土地は関西の中でも変った気質を持つ街だ。

 古くは平家によって港として開かれた場所であり、その当時から着々と、
『来るもの拒まず、去る者追わず』
という、港特有の気質を根付かせてきた。

 その気質は『開国』という経験を経て、
『新しいものは何でも受け入れる』
というものへと変化していった。

 その代わりと言っては何だが、
『受け入れたものを根付かせる力が無い』
という悪癖も生まれたのだが…それはまた、別の話だろう。





 そんな風に神戸は『映画』だとか『テーブルトークRPG』だとか、輸入物産業の先端の場所になったり。
 外国人への当たりも悪くない土地柄なのだ。


 だからこそ、『銀髪碧眼なのに、日本語しか話せない』俺でも居場所があったのだろう。


 そして……吸血鬼達が日本の拠点として神戸を選んだのも……。
 神戸という土地が、吸血鬼達を受け入れたのも……。


 いわば、自然の流れなのだったのだと、俺は今は理解している。


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過去からのメール5 【5/3 幻記す】

 昨日、テオ君が重傷を負って帰ってきた。
 その表情は、けがにも関わらず、穏やかだった。

「助けて、来たよ」

 それだけを言うと、彼は疲れたように横になった。




 その翌日。
 学校に行ったはずの彼は、擬人符を使って消えていた。

『紫刻館に行ってくる』

 そんなメモを残して。


「あの怪我で、なんでそんな無茶をするんだよっ!」

 私は思わず怒り……だけど、すぐに思い直した。
 確かにテオ君は無茶ばかりをするが、意味の無い無茶はしなくなったと。

 どうしても『神戸』に行かなくてはいけない理由ができたのだろう。

「……でも、帰ったら説教だからねっ!」

 私はそれだけは固く誓い、机の上のメモをにらんだ。



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背後と、依頼からの帰還

 オフラインで背後の親戚が3名重病で、テオが重傷を負って…。
 なんてタイミングだろう(汗)。


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